チェンセン・チャイプラーカーン(ファーン)様式 [北部タイ発]
少し前ですがチェンセン時代の青銅仏を入手しました。チャイプラーカーン(ファーン)様式というチェンマイ北部のものです。蓮の花と舟形を組み合わせた高さのある台座はこの様式に見られるもので全体のバランスもよくとれていると思います。また台座最下部は珍しく透し彫り風になっていますがおそらくこの部分はチェンセン・ランカー様式の影響を受けていると思います。年代は16〜17世紀頃のものです。写真2枚目以降はチェンライ市内のワット・プラケオ寺院に展示されている大型の台座とその記述です。参考まで。
<追記>2021年12月26日 写真3枚追加しました。
Buddhist Sculpture of Northern Thailand
- 作者: Carol Stratton
- 出版社/メーカー: Serindia Pubns
- 発売日: 2003/06/01
- メディア: ハードカバー
ガラー・ランナー 1対の仏 [北部タイ発]
神聖な力が宿っていると言われているガラー・ターディアオ(1つ目のガラー)と呼ばれる稀にしか出てこないココナッツの殻に1対の仏が彫られたお守り(タイ北部のクルアンラーン)です。瞑想する仏の姿がクラシックで気に入っている。入手する以前よりプラスチックケースに入れられていたので中の状態はとてもいいがプラスチックが劣化しており銀枠ケースに入れ替えようと思っている。その前に元の状態を撮影しておいた。
ドワーフ像(ドヴァーラヴァティー期) [タイ発]
また博物館級のものを入手しました。今度はスパンブリー県ウートンで出土したドワーフ像がデザインされたテラコッタ片です。全体はどのようなものだったかは分かりませんがドヴァーラヴァティー期のものです。写真2〜4枚目は文献の写真ですが2枚目はナコンパトム県の仏塔ベース部分のドワーフ像です(現在はなくなったか、ドワーフ像は別に保管されていると思います)。写真3、4枚目はナコンパトム国立博物館のものですが今回入手したテラコッタ片のドワーフ像両脇と同パターンの模様です。文献の解説ではインド グプタ朝の影響を受けた美術と記載されています。ドワーフ像は守り神(守護神)的なイメージがありますが文献ではヒンズー神のクベーラ(毘沙門天)やラクシュミー(吉祥天)同様、豊かさのシンボルと解釈されているようです。最後の3枚の写真はウートン国立博物館のスタッコ製のドワーフ像や獅子像です。年代的には7〜8世紀頃のものだと思います。ナコンパトムやウートンの国立博物館にはしばらく行っていないのでまた行って勉強してこようと思っています。
<追記>発注していたステンレス製のケースが仕上がってきたのでさっそくケースに入れた。サイズはぴったり。これでこのドワーフ像は一生安泰だろう。
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia
- 作者: John Guy
- 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
- 発売日: 2014/05/06
- メディア: ハードカバー
洞窟寺院ポーウィン山(モンユワ) [ビルマ発]
パキスタンの菩薩像 残欠(テラコッタ製) [その他]
約2年前に入手したテラコッタ製の残欠です。ずっと年代と出処が気になっていたのですが先日メトロポリタン美術館で同じ美術様式の像を見つけることが出来ました。それが写真2枚目から5枚目パキスタン北部スワート渓谷のものです。その下の写真はそれらの胴体部を拡大したもので最後2枚はテラコッタ像と比較した写真です。体の形状、肉づきや腰部の布の表現方法が同一ということが分かると思います。またテラコッタ像と同じく肩には螺髪がかかっていました。材質は異なりますがテラコッタ製の残欠で分かる美術様式のほとんどが共通しており、入手先がガンダーラと言っていた点も最初は信じていませんでしたがインド北西部ガンダーラ地方に近いパキスタン北部のスワート渓谷となればまんざらてきとうな説明ではなかったのだと思いました。また展示されているこれらの菩薩像は7世紀と記述されており、とりあえずこれで年代と出処がおおよそ分かり良かったのですが、メトロポリタン美術館では東南アジアのものよりも西側のより仏教の源流に近いインドやパキスタンのものが充実していました。全ての美術を把握していくことはな大変なことですが仏教美術伝来の道筋や美術の移り変わりを把握する上でやはりおおまかでも知っておく必要があると思いました。今後の課題にしたいと思います。テラコッタ像の以前の記事リンクを貼り付けておきます。https://thaiart.blog.ss-blog.jp/2017-10-07
<追記>2020年7月19日 先日やっとこのトルソーを設置する台のアイデアが思い浮かび発注したものが、無事仕上がり今日モノが届きました。テラコッタなので穴を開けないで設置出来るタイプです。イメージ通りで素晴らしい。
<追記>2020年7月24日 写真3枚追加。こちらもメトロポリタン美術館で展示されて同じくパキスタン北部スワート渓谷の彫刻(大理石製)で中央が仏陀蔵、両脇が菩薩像です。追加した写真1枚目は右側の菩薩像を拡大したものですがテラコッタ製の残欠(トルソー)はちょうどこのような像だったのではないかと思います。
<追記>2021年9月20日 テラコッタ製ではなく粘土製のようです。アフガニスタンのフォンドゥキスタン出土の「飾られた仏陀像(ギメ東洋美術館、8世紀)」と技法や年代も近いと思います。やはりグプタ朝インド美術の影響を受けているようです。タジキスタンのアジナ・テペ出土のものとも年代も近いと文献を見て感じました。
弥勒菩薩像 プラコーンチャイ様式(ブリラム県) [タイ発]
写真1枚目はかなり以前に入手した青銅製の弥勒菩薩像(プラコーンチャイ様式)の上半身です。写真2枚目は今回メトロポリタン美術館で最も見たかったブリラム県プラコーンチャイ郡カオプラーイバットⅡ寺院出土の大型の青銅製菩薩像(こちらは観音だと思います)です。そして写真3枚目は実物を見ることは出来ませんでしたが同出土地でロックフェラー3世のコレクションである大型の弥勒菩薩像です。今回、博物館の展示物と比較して見て、サイズ状態は異なりますが髭がある点や後頭部の髪型等、細かい美術様式も共通していることから写真1枚目のものも同出土地のものだとほぼ確信出来たと思っています。年代的にも同時期8世紀のものです。
<追記>2023年10月9日 先月タイ中北部 ペッチャブーン県シーテープ遺跡が世界遺産に登録されましたがこのシーテープの聖地(丘)カオタモーラットの洞窟から発掘された弥勒菩薩の頭部(バンコク国立博物館蔵、写真左側)とプラコーンチャイ青銅弥勒菩薩の頭部と比較して見ました。写真2枚目が博物館記述です。その下の写真が聖地カオタモーラットと洞窟内の写真ですが、ドヴァーラヴァティー様式の仏像の他に頭部のない四臂の菩薩像が数体見えますがこれらの像のいずれかの頭部です。現在、シーテープ遺跡とそれに関連するドヴァーラヴァティー期の遺物がバンコク国立博物館で特別展示されており、詳しく展示、説明されています。前置きが長くなりましたがこのカオタモーラット洞窟内の仏像や菩薩像はプラコーンチャイ出土の青銅菩薩像と美術様式が近く、ほぼ同時期のものだと思います。参考まで。
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia
- 作者: John Guy
- 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
- 発売日: 2014/05/06
- メディア: ハードカバー
メトロポリタン美術館(ニューヨーク) [その他]
そしてメトロポリタンミュージアムです。細かくは書きませんが一言だけ「最高」でした。カンボジアのプレアンコール期、タイのドヴァーラヴァティー期、そしてブリラム県プラコーンチャイ出土の大型の青銅菩薩像、タイ南部からインドネシアにかけてのシュリーヴィジャヤ美術(ジャワ美術)等々、1000年〜1400年前の東南アジア初期の超一級品を間近で見てきました。ニューヨーク滞在中は毎日通いました。
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia
- 作者: John Guy
- 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
- 発売日: 2014/05/06
- メディア: ハードカバー