今度は写真1枚目右側のプレ・アンコール期の青銅仏の年代を文献と比較して検証してみました。この青銅仏はアンコール・ボレイ期(6世紀〜7世紀初め)のものとして入手したコレクションです。写真1枚目左側の青銅像はロンドンにある博物館のコレクションです。年代は6世紀のものでマレー半島出土と言い伝えられてきているようです。美術様式は右側とほぼ同じですが顔つきは異なります。左側の像はインド色の濃い顔つきをしています。おそらくグプタ美術(4〜6世紀)の影響を強く受けているのだと思います。次の写真はプノンペン国立博物館にあるアンコール・ボレイ出土のクリシュナ神像(7世紀初期)でとても有名な石像です。最初の青銅仏と比べてサイズはまったく異なりますが実は1枚目右側の青銅像の目とこの石像の目の形状がほぼ同じなのです。顔をアップにした比較写真が写真3枚目です。ちなみに石像は約120センチ、青銅像は約10センチで頭部のサイズは僅か15ミリほど。この共通点を文献から見つけた時、時代の美術(トレンド)の強さに唸ってしまいました。結果としてプレ・アンコール期の青銅像の年代は6世紀後期〜7世紀初期、美術もアンコール・ボレイ様式という結論に妥当性があり、入手時の理解と相違はありませんでした。今回、「仏像の目で年代が分かる」と題して計4度記事にしましたが、全ての記事で引用した文献が下のリンクの「Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia」です。世界各国の有名博物館の「東南アジア初期の一級品」が掲載された超おすすめの文献です。

Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia

  • 作者: John Guy
  • 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
  • 発売日: 2014/05/06
  • メディア: ハードカバー