アンコール・ボレイ様式 青銅仏(祝!シーテープ遺跡 世界遺産登録) [カンボジア発]
昨日19日にタイに嬉しい一報が届きました。タイ北部(中北部)のペッチャブーン県にあるシーテープ遺跡が世界遺産に正式に登録されたからです。タイにある古代遺跡ではスコータイ遺跡、アユタヤ遺跡に次ぐ3つ目で、ドヴァーラヴァティー王国時代に作られた最初の世界遺産になりました。シーテープ遺跡はスコータイやアユタヤ遺跡と比べて、日本人にとってはまだかなりマイナーな遺跡ですが、これを機にドヴァーラヴァティーという言葉ももっと知れ渡るようになればと思います。写真4枚目以降がシーテープ遺跡の写真です。実はまだ行ったことがなく、いずれ行くつもりです。前置きが長くなりましたが、シーテープ遺跡が世界遺産に登録されたことにより、海外の有名博物館に展示されているシーテープ出土と思われる仏像やヒンドゥー神像のニュースもsnsを通し流れました。そのうちの1つが写真1〜3枚目(右側)の石像です。アメリカのクリーブランド美術館のコレクションになっている大型(約114センチ)の仏陀立像です。年代はドヴァーラヴァティー期 7世紀初め頃ものです。毎度のことですがアンコール・ボレイ様式の青銅仏(写真左側)と比較してみました。青銅像は高さが11センチ弱なので両者のサイズはまったく異なりますが、美術様式は非常によく似ています。作られた年代もほぼ同時期のものだと思います。ドヴァーラヴァティー王国時代の遺跡(仏塔、寺院跡)ではナコンパトム県の仏塔プラ・パトム・チェーディーが最も有名ですが、シーテープ遺跡はそれよりも早い時期のものだと言われています。その理由の1つにシーテープ遺跡ではスーリヤ神像やヴィシュヌ神像などの大型のヒンドゥー神像が発見されているからです。この点は今後さらに追究され、公に発表されていくでしょう。このアンコール・ボレイ様式(プレアンコール期)の青銅仏の過去記事のリンクを貼り付けておきます。こちらも合わせてご覧下さい。https://thaiart.blog.ss-blog.jp/2019-06-01
<追記>2023年9月24日 タイ中部ロッブリー県 ナーラーイ国立博物館に提示されているシーテープ出土の石仏(写真1枚目左側)の顔つきと体つき(スタイル)がアンコール・ボレイ青銅仏とよく似ているので並べて比較してみました。シーテープは扶南国のあったアンコール・ボレイ(カンボジア南部)やベトナム南部(オケオ周辺)と繋がりがあったことが美術様式からも想像出来ます。先週、シーテープ遺跡が世界遺産に登録されたことからシーテープ出土の遺物に関心が集まっています。バンコク国立博物館でも世界遺産登録を記念して特別展示室を作られています。最後の写真4枚がその様子です。参考まで。
<追記>2023年9月25日 最後にプノンペンのカンボジア国立博物館に展示されている本家本元 アンコール・ボレイ出土の石仏(プノム・ダ様式、6世紀)と比較してみました。この像は東南アジアの仏像の中でも最も初期に作られた石仏(写真1枚目とその記述)で、インド、グプタ朝(4〜6世紀)の影響を強く受けた像です。顔つきからもしかするとインドから来た仏師によって作られたものかもしれません。参考まで。
<追記>2023年10月5日 もう1点、今度はホーチミン市美術館に展示されている石像(キエンザン省出土、6〜7世紀)と比較してみました。顔つきから分かるようにこの像もグプタ朝(4〜6世紀)の影響を強く受けた東南アジア初期の仏像です。参考まで。
<追記>2023年10月8日 また比較です。今回はハノイのベトナム国立歴史博物館に展示されている木製の仏像(メコンデルタ出土)と比較してみました。年代はホーチミン市の歴史博物館に展示されている扶南国の木製仏と同様に記述は4〜6世紀となっていましたが6世紀のものだと思います。この木製仏はおそらくの地元の仏師によって作られたものだと顔つきから想像出来ます。参考まで。
<追記>2023年9月24日 タイ中部ロッブリー県 ナーラーイ国立博物館に提示されているシーテープ出土の石仏(写真1枚目左側)の顔つきと体つき(スタイル)がアンコール・ボレイ青銅仏とよく似ているので並べて比較してみました。シーテープは扶南国のあったアンコール・ボレイ(カンボジア南部)やベトナム南部(オケオ周辺)と繋がりがあったことが美術様式からも想像出来ます。先週、シーテープ遺跡が世界遺産に登録されたことからシーテープ出土の遺物に関心が集まっています。バンコク国立博物館でも世界遺産登録を記念して特別展示室を作られています。最後の写真4枚がその様子です。参考まで。
<追記>2023年9月25日 最後にプノンペンのカンボジア国立博物館に展示されている本家本元 アンコール・ボレイ出土の石仏(プノム・ダ様式、6世紀)と比較してみました。この像は東南アジアの仏像の中でも最も初期に作られた石仏(写真1枚目とその記述)で、インド、グプタ朝(4〜6世紀)の影響を強く受けた像です。顔つきからもしかするとインドから来た仏師によって作られたものかもしれません。参考まで。
<追記>2023年10月5日 もう1点、今度はホーチミン市美術館に展示されている石像(キエンザン省出土、6〜7世紀)と比較してみました。顔つきから分かるようにこの像もグプタ朝(4〜6世紀)の影響を強く受けた東南アジア初期の仏像です。参考まで。
<追記>2023年10月8日 また比較です。今回はハノイのベトナム国立歴史博物館に展示されている木製の仏像(メコンデルタ出土)と比較してみました。年代はホーチミン市の歴史博物館に展示されている扶南国の木製仏と同様に記述は4〜6世紀となっていましたが6世紀のものだと思います。この木製仏はおそらくの地元の仏師によって作られたものだと顔つきから想像出来ます。参考まで。
Arts of Ancient Viet Nam: From River Plain to Open Sea (Museum of Fine Arts)
- 出版社/メーカー: Museum of Fine Arts Houston
- 発売日: 2009/03/24
- メディア: ハードカバー
アンコール国立博物館(シュムリアップ) [カンボジア発]
次に行ったのがアンコール国立博物館です。2007年頃にオープンしたまだ新しい博物館でかなりお金をかけて作られたと思います。展示物もとても多くじっくりと見学するなら2時間以上は必要です。内容はアンコール期(9世紀〜13世紀)の石像を細かく分けて展示されており美術の違いが解説されています。ほとんどが暗い室内に照明を当てた展示方法で一長一短はありますが石像は自然光で見たほうがいいとなと感じました。また少し違和感を感じるものもあり一部修復や直しもされているだろうと思います。ただこれだけの数を見る機会は他にはありませんので一度は見ておいていいと思います。写真は撮れませんでしたがポストアンコール期の木製仏も多くかなり見ごたえがありました。
Masterpieces of the National Museum of Cambodia
- 作者: Helen Jessup
- 出版社/メーカー: Friends of Khmer Culture
- 発売日: 2006/10/10
- メディア: ペーパーバック
プレアー・ノローダム・シアヌーク アンコール博物館(シュムリアップ) [カンボジア発]
先週20年以上ぶりにアンコール・ワットのあるシュムリアップに行って来ました。目的は博物館を見学するためです。まずはプレアー・ノローダム・シアヌーク アンコール博物館です。ここはバンテアイ・クデイというアンコール期の寺院(遺跡)から出土したものが展示されており、発掘調査を行った上智大学の先生の解説(クメール語、英語、日本語)が多く掲示されているので勉強になりました。ブロンズ製の仏像はなく、ほぼ全て砂岩製の石像ですが内容も展示品も良かったです。見張りがぴったりとくっ付いていてなかなか写真は撮れませんでしたが館内の雰囲気も良く、特に日本人にはお勧めの博物館だと思います。
Adoration and Glory: The Golden Age of Khmer Art
- 作者: Emma C. Bunker
- 出版社/メーカー: Art Media Resources Ltd
- 発売日: 2003/12/01
- メディア: ハードカバー
青銅菩薩像(観音 or 弥勒)プレアンコール期 [カンボジア発]
写真1枚目はメトロポリタン美術館に展示されている(四つの腕)四臂の観音菩薩像です。下にリンクしている文献にも掲載されており7世紀後半〜8世紀初めのものでアック・ヨム(Ak Yum)というプレアンコール時代 7世紀頃に建てられたヒンズー教寺院出土のものだろうと記述されています。このアック・ヨム寺院については地球の歩き方にも少し載っています。今回はこの観音菩薩像とかなり以前に手に入れた(写真2枚目の)弥勒菩薩像(上半身のみ)を比較して見ました。この弥勒菩薩像はタイ東北部のブリラム県プラコーンチャイ郡出土のもので完品や大型のものは海外の美術館、博物館のコレクションになっています。(写真1枚目もその中の一つです)。3枚目がこの2点の頭部をアップして比較した写真です。文献掲載のものは線がクッキリ残っており状態の違いはありますが、顔の輪郭や目の形状、表情等かなり似ているのが分かります。出土地は直線約150キロと少し離れていますがほぼ同時期に作られたものだと思っています。
(追記)カンボジアの時代区分では2点ともプレアンコール期 コンポン・プレア様式のものです。
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia
- 作者: John Guy
- 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
- 発売日: 2014/05/06
- メディア: ハードカバー
プレアンコール期青銅仏 [カンボジア発]
プレアンコール期のアンコール・ボレイ様式と呼ばれる青銅仏 7世紀初期頃のものです。造形が美しい。写真2〜4枚目は下の文献に掲載されているアンコール・ボレイ出土のクリシュナ像(7世紀初期)とその記述です。両者はサイズはまったく異なりますが目の形状はよく似ているので比較して見ました。青銅仏も石像とほぼ同時期に作られたものだと思います。作られたエリアも近いと推測しています。
<追記>2023年9月24日 アンコール・ボレイ青銅仏の最新記事のリンクを貼り付けておきます。https://thaiart.blog.ss-blog.jp/2023-09-20-1
<追記>2023年9月24日 アンコール・ボレイ青銅仏の最新記事のリンクを貼り付けておきます。https://thaiart.blog.ss-blog.jp/2023-09-20-1
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia
- 作者: John Guy
- 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
- 発売日: 2014/05/06
- メディア: ハードカバー
プレアンコール青銅仏頭部 [カンボジア発]
プレアンコール期の青銅仏頭部です。この頭部はカンボジア領内かカンボジア国境に近いタイ東北部で出土したものでタイではドヴァーラヴァティー様式と呼ばれることが多いですが正確にはプレアンコール様式です。小さな青銅像の頭部ですが目には瞳がありとても迫力があります。瞳部分がある仏像は同時代の石像に一部見られますが青銅像にはあまり見られません。顔つきが西洋(インド)的なのはグプタ美術の影響を受けているからだと思います。年代は7世紀〜8世紀頃。下の写真2枚は文献から瞳のある仏像を抜粋したものです。参考まで。
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia
- 作者: John Guy
- 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
- 発売日: 2014/05/06
- メディア: ハードカバー
ヴィシュヌ神の手(青銅製) [カンボジア発]
ハスの花を持った青銅製のヴィシュヌ神の手です(写真1〜3枚目)。時代的にはアンコールワット期(12世紀)前後のものですが年代の特定が長い間出来ていなかった。しかし先日プノンペンのカンボジア国立博物館に行った時に撮った展示品の写真の中に時代の特定につながるものを見つけました。それが4枚目からの写真「リクライニング・ヴィシュヌ神」です。大型の青銅像で博物館の目玉の一つです。過去に日本で開催された展覧会にも来たことがあります。写真8枚目からが手の比較です。大きさはまったく異なりますが腕輪を含めた美術様式がよく似ています。時代はアンコールワット期よりも古いバープオン期(11世紀)のものです。
Adoration and Glory: The Golden Age of Khmer Art
- 作者: Emma C. Bunker
- 出版社/メーカー: Art Media Resources Ltd
- 発売日: 2003/12/01
- メディア: ハードカバー
カンボジアの木工美術 機織りの道具(その2) [カンボジア発]
以前記事にしたカンボジア木工美術の続きです。先日プノンペンのカンボジア国立博物館で撮った「機織りの道具」の写真を掲載しておきます。私も17、18年ほど前に収集したのですが今はなかなかモノがありません。コレクターが手放すのを待つしかありませんね。カンボジアのクメールシルク(アンティークシルク)と同時期19〜20世紀のものです。以前書いた記事のリンクを貼り付けておきます。
https://thaiart.blog.so-net.ne.jp/2017-06-09
カンボジア国立博物館(プノンペン) [カンボジア発]
現在旅の途中ですが、先週20年ぶりに首都プノンペンにあるカンボジア国立博物館に行って来ました。相変わらず博物館級の雲上レベルのものはばかりで仏像好きには天国のようなところです。今回はタイミング良く全てのものが見れましたが時期によっては世界中で開催される東南アジア仏教美術展にこの博物館から多くの展示品が貸し出されます。やはり一番の目玉がカンボジア最初期の仏教美術であるプレアンコール期(6世紀~9世紀)のもの(写真1枚目、4〜9枚目、17〜18枚目)です。写真をたくさん掲載しておきます。
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia
- 作者: John Guy
- 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
- 発売日: 2014/05/06
- メディア: ハードカバー
仏像の目で年代が分かる(その4) [カンボジア発]
今度は写真1枚目右側のプレ・アンコール期の青銅仏の年代を文献と比較して検証してみました。この青銅仏はアンコール・ボレイ期(6世紀〜7世紀初め)のものとして入手したコレクションです。写真1枚目左側の青銅像はロンドンにある博物館のコレクションです。年代は6世紀のものでマレー半島出土と言い伝えられてきているようです。美術様式は右側とほぼ同じですが顔つきは異なります。左側の像はインド色の濃い顔つきをしています。おそらくグプタ美術(4〜6世紀)の影響を強く受けているのだと思います。次の写真はプノンペン国立博物館にあるアンコール・ボレイ出土のクリシュナ神像(7世紀初期)でとても有名な石像です。最初の青銅仏と比べてサイズはまったく異なりますが実は1枚目右側の青銅像の目とこの石像の目の形状がほぼ同じなのです。顔をアップにした比較写真が写真3枚目です。ちなみに石像は約120センチ、青銅像は約10センチで頭部のサイズは僅か15ミリほど。この共通点を文献から見つけた時、時代の美術(トレンド)の強さに唸ってしまいました。結果としてプレ・アンコール期の青銅像の年代は6世紀後期〜7世紀初期、美術もアンコール・ボレイ様式という結論に妥当性があり、入手時の理解と相違はありませんでした。今回、「仏像の目で年代が分かる」と題して計4度記事にしましたが、全ての記事で引用した文献が下のリンクの「Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia」です。世界各国の有名博物館の「東南アジア初期の一級品」が掲載された超おすすめの文献です。
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia
- 作者: John Guy
- 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
- 発売日: 2014/05/06
- メディア: ハードカバー