アユタヤ王朝時代の壁画(ペッチャブリー県) [タイ発]
タイ南部ナコーンシータマラートからは一気にペッチャブリー(ペッブリー)まで北上しました。ペッブリーにはアユタヤ王朝期の壁画、仏画が残っている寺があり以前から気になっていたので、途中のスラータニーのチャイヤー国立博物館は次回の楽しみに取っておくことにした。ペッブリー市内の街並みはすでにタイ中部の風景なのでチュムポン県から南が本当のタイ南部と呼べるのではないかと思います。本題に移りますがペッブリー市内の見所は市内の徒歩圏内に凝縮されており1日(1泊)で十分に見どころを回れます。まずは「地球の歩き方」に載っているワット・ヤイ・スワンナーラームです。ここが私的には一番の見所です。内側の本堂と外側の木造の建物の内部に貴重なアユタヤ王朝期18世紀ごろの壁画、仏画(絵画)がほぼオリジナルの状態の残っています。一部は補修や剥がれないようにするための処理がされていますが当時の迫力ある美術様式がよく残っています。アユタヤ市内でもなかなか見れない博物館級のものです(写真1〜17枚目)。ミャンマーのバガン遺跡のパゴタ内部の壁画でも同様のことが言えますが寺院内部の壁画や絵画は博物館に移動して展示することは困難です。ここでは僧侶の方がよく勉強されており詳細な説明と重要な絵画箇所を教えてくれました。ありがたい事です。次の写真5枚はワット・コ(コ寺)のものです。小さな本堂ですが内壁の全面に壁画が残っています。アユタヤ王朝末期ごろのものです。大部分の色あせた箇所は上から補修されていますが見栄えが良く仏像も素晴らしいです。掲載したこの写真3枚の写真は補修されていないオリジナル部分です。ペッブリー市内は懐かしい風景を残した古い街並みで徒歩で回ると古い建物や小さな遺跡跡を見つける事が出来ますので夕方からの散歩も良いと思います。最後6枚の写真は夕方最後に行った中心部のワット・マハータート・ウィラウィハーンです。壁画はラタナコーシン期ラーマ5世時代ごろのものと思いますが流石は市内一番の寺院で豪華で立派でした。本堂隣のお堂にはラーマ9世夫妻が訪れた時の写真もありました。翌朝はタイ国鉄のペッブリー駅から「クーブア遺跡」のあるラーブリー県のバーン・クーブア駅まで移動しました。(続く)
プラ・ プッタシヒン(ナコーンシータマラート) [タイ発]
タイにはプラ・ プッタシヒンと名が付く重要な仏像があります。たぶん4、5体ほどしかないと思います。1つはバンコク国立博物館にあります。これはエメラルド仏に次いで重要な仏像と言われています。2つ目はチェンマイ市内ワット・プラシンに祀られているチェンセン時代(シンヌン様式)のものです。以前記事にしました。3つ目は今回記事にするナコーンシータマラート県庁敷地内に祀られているものです(写真1〜6枚目)。先日初めて行って拝んで来ました。年代的にはアユタヤ時代中期(16〜17世紀)に作られたナコーンシータマラート様式(通称カノムトム様式)と呼ばれるナコーンシータマラート(タイ南部)発祥のアユタヤ仏で、ふっくらとした体格で座り方は結跏趺坐のとても美しい仏像です。同様式の仏像はナコーンシータマラート国立博物館にも数点展示されています(写真7〜10枚目)。ちなみに私も頭部はありませんが1体持っています(写真11枚目)。参考までに下の写真2枚はバンコク国立博物館に祀られているプラ・プッタシヒンです。以前記事にしたチェンマイ(ワット・プラシン)のプラ・プッタシヒンはリンクを貼っておきます。https://thaiart.blog.ss-blog.jp/2018-02-17
シャン青銅仏 小型 2点 [ビルマ発]
先日入手した小型のシャンの青銅仏2点ですが左側は金の含有量が高いようで重く、地肌部分はピンクゴールドのような色をしている。右は銀の含有量が高く地肌は銀色で全体的が黒光りしている。1点ずつ別々の場所から入手したものだがサイズや金と銀の材質等といい2点はご縁があったのかもしれない。菩提樹のない方を銀枠ケースに入れてみたら考えた通り青銅仏がお守り(プラクルアン)になった。年代的には18〜19世紀のもの
<追記>2020年7月20日 写真を撮ってきたので光度を上げたものを追加しておきます。材質はブロンズですがやはり銀の含有量が高い青銅です。小さくても表情は良いのが分かります。
Burmese Buddhist Sculpture: Johan Moyer Collection
- 作者: Karow, Otto
- 出版社/メーカー: White Lotus Co Ltd
- 発売日: 1995/02/01
- メディア: ペーパーバック
シュリーヴィジャヤ期の塼仏(タイ南部) [タイ発]
タイ南部の記事はまだ途中ですが、ここで入手したばかりのシュリーヴィジャヤ期の塼仏(写真1、2枚目)を記事にします。完品であれば中央仏陀像の周りを8体の菩薩像が囲んでいる曼荼羅の構図に近い塼仏です。裏面には古代文字 Ye Dharmaの印章が押されています。このような印章が手押しされた塼仏は類例がほとんどなく、繊細な美術様式から見てもかなり重要な工房か場所で正式に発行されたものだと思います。写真3、4枚目は今月初めに行ってきたナコーンシータマラート国立博物館に展示されている同型の塼仏(ほぼ完品)とその記述です。さらにその下、写真5、6枚目はこれらの裏表面を比較してみたものです。見ての通り全く同型の塼仏で裏面の手押し5ヶ所の印章を見てもほぼ同時に同金型で作成されたものに見えます。材質も同じ、焼成工程のない土製です。記述には出土地の記載はありませんでしたがナコーンシータマラート県、もしくは周辺のスラータニー県、パッタルン県、トラン県出土のもの、年代は9世紀ごろのものです。その下の写真はシュリーヴィジャヤ期(8世紀後半〜9世紀)の青銅仏(バンコク国立博物館蔵)ですが仏陀像の姿勢や印相(説法印)また光背の形状等、美術様式が塼仏とよく似ています。ともあれ今回博物館でこの型の塼仏を直に確認した直後、即連絡をとり無事この塼仏を入手することが出来た訳です。
<追記>2021年11月6日 バンコク国立博物館の改装がかなり進み展示がかなり良くなっていますね。是非近いうちには行きたいと思っています。ところでこの記事の同型の塼仏も提示されており下に写真を追加しておきました。最後の写真2枚は真ん中のものとの比較ですがもちろん同型と分かります。参考まで。
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia
- 作者: Guy, John
- 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
- 発売日: 2014/05/06
- メディア: ハードカバー
ナコーンシータマラート国立博物館 [タイ発]
ソンクラーの次に向かったのがナコーンシータマラートです。ソンクラーからミニバスで3時間弱北上したところです。夕方に到着し翌日は朝からナコーンシータマラート国立博物館に行きました。約22年ぶりです。外観は当時のままですが館内は改装されメインスペースは空調の効いた素晴らしい博物館になっていました。内容も素晴らしくまずは先史時代、古代ビーズの展示室があり、次からが目的のシュリーヴィジャヤ期の石像やリンガの展示室です。石像はほぼすべてヒンズー神、ヴィシュヌ神像です。写真4、5枚目がナコーンシータマラートで出土した最も古い5〜6世紀の石像(ヴィシュヌ神像)でタイで発見された最古の石像の1つです。写真6枚目は7〜8世紀のもの、写真1、7枚目は8〜9世紀のものです。これらの石像はナコーンシータマラート出土のものですがここからタイ湾(タイランド湾)を挟んだ対岸のベトナム南部(オケオ周辺)の博物館やホーチミン市の歴史博物館でも近い美術様式のものが見られます。2階の展示室にはシュリーヴィジャヤ期やドヴァーラヴァティー期の石仏(トルソー)、仏像頭部や青銅仏、そして塼仏、またナコーンシータマラート様式と言われるアユタヤ時代の青銅仏や金、銀製の仏像も展示されています。文献にも掲載されている貴重な出土品ばかりです。今回の目的の一つ塼仏のショーケースもかなり充実しており、目的のものも見れ来た甲斐がありました。見応えのある博物館で前日行ったソンクラー国立博物館とこのナコーンシータマラート国立博物館がタイ南部では1、2位の規模と内容だと思います。
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia
- 作者: Guy, John
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ソンクラー国立博物館 [タイ発]
先週まで5日ほどタイ南部を周って来ました。タイ南部はまだ行っていない場所が多いですがまずは南部の中心都市ハジャイに入り、そこからソンクラー、そしてナコンシータマラートの2ヶ所の国立博物館に行って来ました。最初の記事は初めて行ったソンクラー国立博物館です。以前から行きたいと思いつつも後回しになっていましたが噂どおり素晴らしい博物館でした。特にこのソンクラー県や周辺の県で出土したシュリーヴィジャヤ期(7〜9世紀)の貴重な遺物は東西貿易時代(1〜6世紀頃)頃からの南インドやジャワ美術の影響を受けたものでタイ国内では最初期のものです。またグプタ美術の影響を受けたドヴァーラヴァティー期(7〜9世紀)のものを含め、文献に掲載されている重文級の仏像や神像が間近で見ることが出来ます。2階にはヤラー県出土の塼仏も数多く展示されており今後はもっとタイ南部を探究して行こうという気持ちになりました。仏教美術以外にも古代ビーズ、陶器類やソンクラー様式と言われる19世紀ごろの美術品が展示されています。博物館はもともと中国美術の影響を受けたソンクラー様式の古い建物で館内も外観もとても雰囲気のある造りをしています。同様にソンクラーの旧市街(中華街)も洒落た街並みで散歩や記念撮影にお勧めです。やはりマレー半島のタイ最南に近いところまで来ると景色はガラッと変わります。20年以上前に訪れたマレーシア、マラッカの中華街が思い出しました。バンコクまで北上するため1泊のみの滞在でしたが次回はゆったりと過ごしたいと思います。
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia
- 作者: Guy, John
- 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
- 発売日: 2014/05/06
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