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東南アジア初期の美術 西側の影響 [ベトナム発]

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タイのドヴァーラヴァティー期、カンボジアのプレアンコール期等、東南アジア最初期の仏像やヒンズー神像の彫刻には源流に近いインドのグプタ美術やアマラーヴァティー美術などの影響が見られ、それが初期の像の魅力の一つと言っていいと思います。写真はチャンパ初期(ベトナム南部)のものとしてかなり以前に入手したテラコッタ製の頭部で2年ほど前に訪れたベトナム南部オケオ周辺の博物館の展示物からおおよその出土地や年代を知ることが出来ました。しかし周辺の出土品と比較してもこの個性的な顔立ちの由来は説明出来ません。先日、オリエント美術の文献を眺めていたところ(他人のコレクションなので掲載出来ませんが)インド・グプタ朝とほぼ同時期のササン朝ペルシア(現代のイラン周辺)の出土品に似た顔付きのものがありました。ベトナム南部等、インドシナ半島沿岸部は6世紀以前からインドやさらに西側と東西の交易があり沿岸部に近いポイントでローマ帝国時代の硬貨が古代ビーズと共に出土しています。もしかしたらこのテラコッタ製頭部もインドよりさらに西側(西アジア)の美術の影響を受けたものかも知れません。異国的で不思議な魅力がある頭部で気に入っており、今後も追究をしていくつもりです。この頭部とベトナム南部の博物館蔵品を比較してみた過去の記事を貼り付けておきます。https://thaiart.blog.ss-blog.jp/2019-06-24

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<追記>2021年7月22日 タイ人コレクターから参考になる意見が聞けました。それは「テラコッタ製の頭部上部の三角に尖ったものは宝冠のように見えるので、そうであればおそらくこの頭部はプレアンコール期の神(菩薩)だろう」。追加写真2枚目は文献に掲載されている青銅製の神像(タイ ブリラム県プラコーンチャイ出土、8世紀)でフィラデルフィア美術館のコレクションです。この像の頭部の宝冠はテラコッタ製頭部に似た三角の形状をしています。かなり昔の記憶ですがこの三角状の宝冠はもともとチャンパ(チャム)特有の美術様式だったと思います。よってプラコーンチャイ出土の青銅神像は逆にチャム美術の影響を受けたものだと思います。以上のことから(ベトナム南部出土の)このテラコッタ製頭部の宝冠部が三角状をしているのはチャム美術本来の美術様式と言っていいと思います。参考まで。
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<追記>2021年11月5日 当時「チャンパ初期」のものとして入手しましたが正しくは「扶南」のものです。

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ヤショーダとクリシュナ [タイ発]

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ドヴァーラヴァティー期(チャンセン出土)のテラコッタ像です。先日コレクターにやっと譲ってもらえたものです。(実物はまだ見ていませんが)赤ちゃんを抱いた女性像で、頭部は欠損していますが赤ちゃんの顔が典型的なドヴァーラヴァティー様式の丸顔で、可愛らしく以前から譲って欲しいとお願いをしていたものです。ただ赤ちゃんにしてはイヤリングや首飾り等の装飾品を身につけており何かただの赤ん坊ではないのでは?と気になっていました。先日、偶然文献からその手がかりがとなるものを見つけたので今回記事にしました。写真4枚目の銅像はメトロポリタン美術館のコレクションで5枚目はその記述です。構図的にテラコッタ像と同じ、つまりこの赤子はヒンズー神クリシュナ、赤子を抱くのは母ヤショーダということになります。おそらくそうだと思います。タイではヒンズー教の神クリシュナ像を見ることはほとんどありませんが、インド美術の影響を受けた初期の東南アジアではクリシュナ像がごく僅か(タイのシーテープ、カンボジアのアンコール・ボレイ付近で)作られており、その大型の石像をタイやカンボジアの国立博物館で見ることが出来ます。参考に、もう1点もっているクリシュナ神(テラコッタ製)の記事リンクを貼りつけておきます。https://thaiart.blog.ss-blog.jp/2019-09-04

<追記>2023年10月1日 バンコク国立博物館の展示品にも似た像がありましたので写真追加(写真2枚目)します。ヤショーダとクリシュナとして記事にしましたが博物館の見解ではHariti(ハリティー、鬼子母神)のようです。参考まで。
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